ハロプロ好きの雑記。
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別にわかってほしい訳じゃないからわたしはこれでいいと思ってる。
ノートの切れ端、歌詞を書く手を止めると、ふと小さな箱が目に入った。
先輩の妹にプレゼントされたのは、レースの飾りのついたシルク製のハート型の箱だった。
その箱の中には小さな陶製の人形とバラのドライフラワー、ミニチュアのティーカップ、それにセラックの塗られた貝殻が詰めてあった。
いい匂いのする可愛らしいその箱は、明らかに私の部屋に溶け込めていなかった。
……はっきり言って、こんなものには興味が無いはずだった。
誕生日やクリスマスといった機会に幼い私が両親にねだったのは、専らオーディオ機器だった。大きなスピーカーが欲しくて、店先で泣きわめいたくらいだ。
幼稚園児の私が集めていたものはなりきりセットでもおままごとセットでもお人形の服でもなくて、好きなアーティストのブートレグだったし、「大きくなったら何になりたい?」という質問に対する答えは、ケーキ屋さんでもお嫁さんでも無かった。大好きなミュージシャンの名前を挙げていた。小学校四年生になりギターを弾くようになってからは、エフェクターばかりが欲しかった。
お洒落にお金を使うくらいなら、ブートを集める方に回したかった。
色恋沙汰にも興味が湧かなかった。私の恋人といえば、真っ赤なムスタングだけだったから。
押し付けられたハート型の箱がこんなにも浮いてしまうオーディオ機器だらけのこの部屋のように、私自身もつまらない。つまらない奴だった。
それなのにどうして。
どうして彼女は私を溺愛し、世話を焼いてくれるのかが、どうしても分からなかった。なぜ私を恋人と呼べるのか。
ハート型の箱をくれた彼女は頼んでもないのに私の事を母親的な愛情で包んでくれた。
母親以外の人が作ったお弁当を食べたのも初めてだったし、両親以外の人と抱き合うのも初めてだった。
おまけに彼女はとても温かかった。見つめ合った途端、内なるエンジンがフル回転で燃焼したようだった。
そう、軽音部に誘ってくれたあの日から、彼女は絶えず私を閉じ込めるのだ。
彼女に渡されたハート型の箱に、私はもう何週間も閉じ込められていた。
彼女の磁力のような魅力に、小さな私はとてつもなく引き寄せられてしまったのだった。
「梓ちゃん」
彼女の声。洗い物はもう済んだらしい。
彼女は頼んでもないのに夕食を準備してくれ、片付けまでやってくれた。
……頼んでもないのに。
いつもそうだ。しかも、私が手伝おうとしても、彼女は私の好意を無駄にする。
「わたしが一人でやるよ、梓ちゃんは先に部屋に戻ってて」
そう言って聞かないのだ。
彼女は分からず屋だった。頑固だった。それが私に不満を湧き上がらせる。良い意味での不満を。
彼女が私にしてくれるように、私は彼女に何かしてあげたかったのに。
彼女に借りを作るのには、もううんざりしていた。愛情表現がうまくない私を、彼女は大きな愛で包んでくれる。例え私が茶色のコーデュロイのコートを羽織ったまま眠りについたとしても、変なパンクバンドのTシャツを着ていたとしても、ぼろぼろのリーヴァイスを掃いていたとしても。
そんなみっともない格好をしていても、彼女は何も言わずにいた。きっと何日も風呂に入らなくても、彼女は何も言わずにいてくれるのだろう。
本当に、私は彼女に借りを作ってばかりだった。
彼女の天使みたいな髪の毛で、私の心は切り傷を負ってしまっていたのだ。良い意味での傷を。
そして、私がこんなにも彼女に対して不満を持っているのに、彼女は全く気付かずにいつもの笑顔で言うのだ。
「…その箱、気に入ってくれた?」
その問いの答えとして、私はたった今完成したばかりの歌詞を彼女に渡した。
彼女はそれを見て笑顔になると、大きく頷いた。
―――彼女は俺が弱っている時に、魚座の女のような目で俺を見るんだ
俺は何週間も、お前のハート型の箱の中に閉じ込められている―――
きっとこれからも変わらないのだろう。
彼女の純粋な愛情を素直に受け取れない私は、これからもずっとずっと、不満を沸き上がらせ続けるのだ。
先輩の妹にプレゼントされたのは、レースの飾りのついたシルク製のハート型の箱だった。
その箱の中には小さな陶製の人形とバラのドライフラワー、ミニチュアのティーカップ、それにセラックの塗られた貝殻が詰めてあった。
いい匂いのする可愛らしいその箱は、明らかに私の部屋に溶け込めていなかった。
……はっきり言って、こんなものには興味が無いはずだった。
誕生日やクリスマスといった機会に幼い私が両親にねだったのは、専らオーディオ機器だった。大きなスピーカーが欲しくて、店先で泣きわめいたくらいだ。
幼稚園児の私が集めていたものはなりきりセットでもおままごとセットでもお人形の服でもなくて、好きなアーティストのブートレグだったし、「大きくなったら何になりたい?」という質問に対する答えは、ケーキ屋さんでもお嫁さんでも無かった。大好きなミュージシャンの名前を挙げていた。小学校四年生になりギターを弾くようになってからは、エフェクターばかりが欲しかった。
お洒落にお金を使うくらいなら、ブートを集める方に回したかった。
色恋沙汰にも興味が湧かなかった。私の恋人といえば、真っ赤なムスタングだけだったから。
押し付けられたハート型の箱がこんなにも浮いてしまうオーディオ機器だらけのこの部屋のように、私自身もつまらない。つまらない奴だった。
それなのにどうして。
どうして彼女は私を溺愛し、世話を焼いてくれるのかが、どうしても分からなかった。なぜ私を恋人と呼べるのか。
ハート型の箱をくれた彼女は頼んでもないのに私の事を母親的な愛情で包んでくれた。
母親以外の人が作ったお弁当を食べたのも初めてだったし、両親以外の人と抱き合うのも初めてだった。
おまけに彼女はとても温かかった。見つめ合った途端、内なるエンジンがフル回転で燃焼したようだった。
そう、軽音部に誘ってくれたあの日から、彼女は絶えず私を閉じ込めるのだ。
彼女に渡されたハート型の箱に、私はもう何週間も閉じ込められていた。
彼女の磁力のような魅力に、小さな私はとてつもなく引き寄せられてしまったのだった。
「梓ちゃん」
彼女の声。洗い物はもう済んだらしい。
彼女は頼んでもないのに夕食を準備してくれ、片付けまでやってくれた。
……頼んでもないのに。
いつもそうだ。しかも、私が手伝おうとしても、彼女は私の好意を無駄にする。
「わたしが一人でやるよ、梓ちゃんは先に部屋に戻ってて」
そう言って聞かないのだ。
彼女は分からず屋だった。頑固だった。それが私に不満を湧き上がらせる。良い意味での不満を。
彼女が私にしてくれるように、私は彼女に何かしてあげたかったのに。
彼女に借りを作るのには、もううんざりしていた。愛情表現がうまくない私を、彼女は大きな愛で包んでくれる。例え私が茶色のコーデュロイのコートを羽織ったまま眠りについたとしても、変なパンクバンドのTシャツを着ていたとしても、ぼろぼろのリーヴァイスを掃いていたとしても。
そんなみっともない格好をしていても、彼女は何も言わずにいた。きっと何日も風呂に入らなくても、彼女は何も言わずにいてくれるのだろう。
本当に、私は彼女に借りを作ってばかりだった。
彼女の天使みたいな髪の毛で、私の心は切り傷を負ってしまっていたのだ。良い意味での傷を。
そして、私がこんなにも彼女に対して不満を持っているのに、彼女は全く気付かずにいつもの笑顔で言うのだ。
「…その箱、気に入ってくれた?」
その問いの答えとして、私はたった今完成したばかりの歌詞を彼女に渡した。
彼女はそれを見て笑顔になると、大きく頷いた。
―――彼女は俺が弱っている時に、魚座の女のような目で俺を見るんだ
俺は何週間も、お前のハート型の箱の中に閉じ込められている―――
きっとこれからも変わらないのだろう。
彼女の純粋な愛情を素直に受け取れない私は、これからもずっとずっと、不満を沸き上がらせ続けるのだ。
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