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ハロプロ好きの雑記。
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見えてる指輪と、見えない首輪。

薬指の指輪。
振動する携帯電話。
二つの間で揺れている梓ちゃんの、白い喉が鳴るのを眺めてた。

―――放課後の教室。



「…部活、行かなくていいの?」
「………」

梓ちゃんは沈黙を続ける。それは決して行かないという意思表示の訳じゃなくて、ただ答えられないから。現時点では全く身動きが取れない梓ちゃんは今はこうしてわたしの指示を待っているだけ。
わたしが梓ちゃんにどうして欲しいのか伝えるのを喉を鳴らして待っている。ぐるぐるぐる、って、飼い猫みたいに。

束縛。わたしが梓ちゃんを。
……そんなにたくさんの事を、わたしは望んでないよ。
ただ一緒にいて欲しい。


「指輪、気に入ってくれたかな」
「うん」
「ギター、弾きづらくない?」
「平気だよ」

そう答えて無理に笑顔を作った梓ちゃんの薬指に光る指輪は、わたしの束縛の象徴だった。ちょうど、飼い主が猫に首輪をつけるのと同じような感覚。
夕暮れの教室の中ではよく目立って明るく光る携帯電話の画面。そこには『新着e-mail 律センパイ』の表示。
なかなか部活に来ない梓ちゃんを、軽音部の皆さんはとても心配している。証明するのはひっきりなしに鳴る着信音。
梓ちゃんも本当は部活に行きたくて行きたくて仕方ないんだと思う。


―――早く部室に行って、先輩たちを安心させてあげたい。その温もりに触れたい。ムギ先輩のお茶が飲みたい。昨日澪先輩に教えて貰ったところ、出来るようになったから見て貰いたい。律先輩と一緒にお喋りしたい、唯先輩に教えてあげたところは―――


例え梓ちゃん自身がそれを言葉にしないという努力をしたとしても、落ち着きなく動き回る梓ちゃんの眼が考えてる事を垂れ流してるので丸分かりだ。
それでもわたしは梓ちゃんの気持ちに気付かないふりをして、何も知らないような顔をしてそんな質問をぶつけ続ける。
質問をしておきながら、それでいて梓ちゃんの本当の答えなんか聞きたくなかった。梓ちゃんの本音は、わたしにとって悲しくなるものでしかないから。


「梓ちゃん…キス、して」
「うん」

要求すると梓ちゃんはすぐに優しいキスをくれた。
たったそれだけで嬉しい。梓ちゃんはとりあえず今の選択肢では部活よりわたしを優先してくれた。

「…好き。梓ちゃん」

言うと、梓ちゃんは猫のような紅い目を細めて笑う。

「わたしもすきだよ」


――――嘘。

本当は、全部全部わかってる。
わたしは梓ちゃんが好き。でも、梓ちゃんはそうじゃないっていうこと。梓ちゃんはわたしが好きじゃない。
…寧ろ、わたしのことを疎ましくすら思ってること。
わたしは梓ちゃんにとって、重たくて、うっとうしくて、出来れば遠ざけたい存在でしかない。
それでも梓ちゃんは優しいから、本音を隠してこうして今日もわたしの恋愛ごっこに付き合ってくれる。

…梓ちゃんがたった一言「憂なんて大嫌い」って言えばそれで済むのに、梓ちゃんがそうしないから。
だからわたしは甘え続ける。その優しさに漬け込んで。何にも気付かないふりをして。馬鹿みたい。だけどやめられない。

例え嫌われていても、わたしは梓ちゃんが好き。大好きで、愛しくて仕方ない。



「…部活、行かなくていいの?」

先程からの質問をもう一度繰り返す。すると可愛い顔が近付いてきて、目元に優しくキスされた。
どきどき、する。
いかないよ、と甘い声が響く。
優しく私を引き寄せて、包み込んだ。

「行かない。…憂を独りには出来ない」


嘘ばっかり。全部全部嘘。
そう思うけれど、梓ちゃんの腕からは逃れられそうにもない。顔が火照るような台詞に、あたたかな温もり。
とても嬉しくて、あたたかくて、このまま永遠にこの時間が続いていきそうな気すらした。

「梓ちゃん…」

声にならない声で呼ぶと、梓ちゃんは喉の奥で鳴くような音を出した。
その白い喉には首輪。存在してはいないけど、確かにそこにあるわたしの束縛。
左手の薬指にある首輪から見えない鎖で繋がれて、こうして部活にも行けないように、好き勝手には身動きの取れない梓ちゃん。彼女はわたしの愛玩動物となっている。玩具。わたしに付き合って、玩具になってくれている。

綺麗な指が輪郭を確かめるようにわたしの頬を撫でる。その手には首輪。わたしは目を閉じる。優しい手つき。猫は梓ちゃんの方なのに、梓ちゃんはいつも飼い猫を撫でるような手つきでわたしを撫でる。
だいすきだよ、と梓ちゃんが嘘を囁く。
思わず涙を溢したわたしを、梓ちゃんは微笑んだまま再度ぎゅっと抱き締めた。

「泣かないで、憂」
「うん……」
「愛してるよ」
「わたしも、梓ちゃんのこと愛してる」


この時間がずっと続けばいいのに。

例えそれが、わたしの独り遊びに過ぎなかったとしても。



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