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ハロプロ好きの雑記。
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あずにゃんのお話。

指先はガタガタと震えていた。今朝の九時、ドラッグストアが開くのを待って手に入れた分はとっくに身体の中だった。
それでも行為の余韻からは何とか抜けたようだ。見上げた空だけが暗闇に呑まれていた。この街は眠ることなど一瞬もなく、いつだって忙しなくそして騒がしい。渋滞。喧騒。事故。
立ち止まり、先程吐き出されてきたばかりの古びたホテルを振り返れば、その一帯だけやけに静まり返っていてそれはもう不気味だった。
ライトが灯っている訳でもない。人々はまるでその建物など見えていない様子で、その前を行き交っていた。
背負ったギターケースの中に、漠然とした不安を抱えていた。加えて、霞掛かった安堵も詰まっていた。背中に何か乗り移ったような、そんな重さを感じつつ、私はふらふらとした、決して正常ではない足取りで歩き出す。
ボロボロのジーンズとくたびれたネルシャツ。穴の空いたカーディガン。随分と小汚い格好だったが、先輩らに捨てられ、まるでゴミのような今の私にはそれぐらいがちょうど良かった。

道端に座った若者らに声を掛けられた。だだっ広いこの街に無責任に放り出され、何をしていいのかわからずにいる、可哀想な人たち。
私も似たようなものだった。
ステージに立つ喜びなど、とうに忘れてしまった。放課後ティータイムのメンバーとも暫く会っていない。左遷とも取れるあの通告を唯先輩にされてから、私はまったくの空っぽだった。
空っぽを埋める為に、ドラッグをやった。ヘロインのくれる安堵は、やはり空っぽなものだったが。それでも、例えそれがチープなものだったとしても、それは一瞬の幸せだった。そのあとに来る零落は地獄そのものでも、一瞬の間だけは幸せだった。

馴染みのぼろぼろの小汚いミニクーパーが乱暴に私の横で止まった。

「あーずさ。何でこんなところほっつき歩いてんの」
「……別に」
「迎えにきた。ほら、乗りなよ。憂も待ってる」

車の窓から顔を覗かせたのは純。純もまた、空虚を持て余すだけの生活を私と共にしていた。
この世にはきっと、満たされた人間など居ない。
薄汚れたガレージで純とライブをしようが、客と喧嘩しようが、純が酒に酔って暴れようが。ギターで客を殴ろうが。
ドラッグ以外で満たされた瞬間など、あった覚えがなかった。
私は先輩たちに捨てられるような駄目人間で、落ちこぼれのくだらない奴なんだから。

車内を流れるラジオ。黙って運転する純。放課後ティータイムの曲が先程からノンストップでかかっていた。

"ごめんねあずにゃん。放課後ティータイムにはもう、リズムギターの子が他にいるんだ"。

あの日言われた解雇通告。
一つ上の先輩たち。
一年の距離って一体どれだけのものなのだろう?自分の存在意義って、一体なんなのだろう。 カーラジオから流れる放課後ティータイムの演奏は、私なんてまるで最初からいなかったかのように完成されていた。
ふと見た自分の腕には当たり前のようにいくつもの注射痕があった。灰色に変色した皮膚からは水気が抜けており、カサカサになった表面に触れていると、まるで気が狂ったようだった。
こんなギタリスト、放課後ティータイムじゃなくてもいらないだろうな、と、そんなことを考えた。
ふと、純が言った。

「梓、放課後ティータイムのライブに招待されてるけど」

行かないと私は言った。

「行かないよ。絶対行かない……」

だよね、と言った純は苦笑し、それからアクセルを思い切り踏み車をとんでもないスピードで走らせた。

あのホテルに着けば、きっと憂が温かい食事を用意してくれるだろう。
ドラッグ以外の安堵。私のたった一つの本当の幸せ。
まだ見ぬ夕食を夢見て、私は暫しの間眠りにつくのだ。

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